私は物心がついた頃から、家にはベランダやバルコニーがある生活を送ってきました。新築にあたりバルコニーは洗濯物を乾かしたり、布団を干したりするために必要な場所、とあまり深く考えずにバルコニーを設置しました。
ところが一条工務店のような高気密高断熱住宅では、部屋の湿度をエアコンの再熱除湿運転などにより上手にコントロールさえすれば、梅雨時に洗濯物の部屋干しを行っても、快適さが損なわれることはありません。「バルコニーを作らない」という選択も可能なのです。
間取り打ち合わせでは、バルコニーの広さ、設備に目を奪われがちですが、検討する重要なことが他にあります。ぜひそれらを総合して「バルコニーが必要なのか」の答えを導き出すことも大切です。
バルコニー、ベランダ、テラスの違い
バルコニーについて考える前に言葉の意味を整理しておきます。バルコニー、ベランダ、テラスの違いについてです。
大雑把な説明で申し訳ないのですが
- ベランダ…建物外に張り出した屋根のかかっているスペース
- バルコニー…建物外に張り出した屋根のないスペース
- テラス…建物の一階から突き出して作ってある床のこと
という違いがあります。
普段あまりお目にかかりませんが、テラスの図面がこちら。
この他にも下の階の屋根に設置する「ルーフバルコニー」もあります。
一条工務店i-smartで選べるバルコニーの手摺
手摺は「ファインバルコニー」と「JY手摺」の二種類が用意されています。どちらも標準で採用できます。
ファインバルコニーとは
ファインバルコニーは写真でもわかりますが、手摺部分はガラス製になっています。
ガラスは開放感を感じられる「透明ガラス」とプライバシーを重視した「ミストガラス」の二種類がラインナップされています。
マンションなどでは見かける手摺ですが、注文住宅、さらに標準で採用できるハウスメーカーは少ないと思います。i-smartの外観をより引き立たせるアイテムとして、採用されるケースが圧倒的かと思います。
見た目はお洒落なのですが、欠点もあります。それは掃除が大変なこと。
手摺、手摺の付根、さらに笠木に至るまで形状が複雑なため、汚れ、砂など掃除にかかる手間が一般的な手摺に比べるとかなりかかります。
JY手摺
JY手摺は一般的な手摺ですが、異なるのはこの部分にもハイドロテクトタイル(オプション)が貼れること。ハイドロテクトタイルはセルフクリーニング効果(太陽光で汚れを分解し、雨水で洗い流す効果)があるため、汚れがつきにくいメリットがあります。
外観で「ファインバルコニー」を選ぶのか、手間のかからない「JY手摺」を選ぶのか、好みの問題もあり一概にどちらが優れているとは言い切れないと思います。
我が家のバルコニーは2箇所。洗濯物を干したりする役割を持ったメインのバルコニー、そして玄関上に設置した雨除けのためのバルコニーです。
ともに「ファインバルコニー」のミストガラスを選択しています。
メインのバルコニー(南向き)
バルコニーで建築費用の削減が可能な場合も
メインのバルコニーは1.5マス×7マスで10.5マス、約5.25帖の広さとなります。
建物寄りの1×7マス分の下には一階の寝室、ダイニングがあります。バルコニー部分は1/2の坪単価設定となるので、総二階が基本のI-smartでは、部屋の上にバルコニーを載せてしまえば施工面積の削減(=建築費用の削減)にもつながります。
吹抜けを設けて坪単価1/2にするのと同じ効果が得られるわけですね。
建物から飛び出している部分は0.5マス×7マス分となっています。
実際の広さ(奥行)
図面上広さは6,370×1,365㎜となっています。しかし実際に測ってみると、壁厚の関係上実寸は
約120㎝となっています。
1.5マス幅取れれば使用目的に対する広さは十分
以前に住んでいた賃貸のバルコニーのサイズは1×7マスの広さと同じ位なのですが、我が家ではかなり狭く感じていたため、奥行きを1.5×7マスと0.5マス分延伸させました。
バルコニーにエアコンの室外機を置いても、ご覧の通り結構余裕があります。
タイル1枚が20㎝四方なので、室外機部分が約40㎝、その前のスペースはおおよそ80㎝になります。仮に1マス幅の奥行きのバルコニーだった場合、室外機前のスペースはタイル2枚、約40㎝となるのでかなり狭くなります。
また屋外物干し金物の長さは約60㎝と1.5マスの奥行きのちょうど半分くらいになります。
洗濯物を干していても、このくらいの幅があればかなり余裕があります。
延伸も検討した軒天井のメリット・デメリット
バルコニーは坪単価1/2の計算ですが、軒天井を延伸させることで、それを支えるために壁が出っ張ると、屋根がかかる部分のバルコニーの坪単価は1/1計算となります。
打合せでは軒天井の延伸について設計士から冬季の日当たり悪化を理由に止めた方が良いとアドバイスを受け、それっきり考えもしませんでした。坪単価も1/1になるので総予算を考え少々及び腰になったのも事実です。
この軒天上の延伸によるメリットとしては
などがあります。反対にデメリットとしては
一番の障害になった費用面は、屋根が広がる分搭載する太陽光パネルが増えるので相殺できたのではないかと思います。
バルコニーの下は居室となっているため、将来的には定期的なメンテナンス次第では、雨漏りの原因になる可能性もありそうです。
多少のコストがアップでも、バルコニーの劣化防止につながるのであれば、軒天井の延伸も多いに検討すべきでした。
玄関上のバルコニー(東向き)
3×1マス、おおよそ1.5帖の広さです。このバルコニーは玄関ポーチが雨で濡れないように設置したもので、バルコニー自体は特に役割はありません。
玄関上にあるので洗濯物を干すのには適さないだろうということで、最初から洗濯物干し用の金物もついていません。
実際の広さ(奥行)
図面上は長さ273㎝×91㎝となっていますが、
実寸は壁厚もあるためさらに短く、約78㎝しかありません。
アーバンルーフとの価格差、袖壁が設置できるメリットも
最終図面に至る過程では、玄関上にバルコニーを付けられずアーバンルーフ設置となった図面も出現しました。青丸部分なのですが、シンプルな玄関に仕上がっています。
費用面では
- バルコニー…22.5万円(0.75坪×坪単価60万×1/2)
- アーバンルーフ…8.5万円
とその差は約14万円となります。このバルコニーが22.5万での設置はかなりお得かと思います。またアーバンルーフよりバルコニーの方が横幅を確保できる分、雨水や日差しを防ぐ効果はありそうです。
ただしバルコニー部分に、出入りできる窓がつけられないと設置は不可能です。
このバルコニー脇にはi-smartの特徴である袖壁もつけました。見た目だけではなく、冬には玄関付近の北西からの季節風を和らげる効果も期待できます。
この写真は上棟時のものです。我が家の袖壁には構造上の役割はないようで、設計士さん曰く飾りとのことでした。しかしこうして見ていると結構厚みもあり、立派なものです。
他の壁と同様工場で作られて現場に運ばれて来ることを考えると、これが無料で設置できるのはありがたいです。
袖壁はバルコニーとセットで設置が可能です。この袖壁を設置できるのもアーバンルーフとの大きな差かもしれません。
将来のメンテナンスは必須
バルコニーは設置場所が外部だけに経年劣化に対応するメンテナンスも必要となってきます。
バルコニーはこうして作られる…その構造
こちらの写真は我が家の上棟時に撮影したものです。
バルコニーの構造がよく分かるかなと思います。
バルコニーはこのようなユニット単位で工場から現場に搬入されてきます。床材がタイルの場合、このように既に工場で貼らた状態になっています。
ユニットは構造用合板の上に設置されます。
バルコニーユニットはFRP防水加工が施されています。強度、防水性能など優れた性能を持つFRP防水ですが、トップコートの剥がれ、防水層の浮き、ひび割れなどの劣化も当然発生します。
バルコニーユニットが劣化しひび割れが起れば、雨漏りが起こる可能性もあります。ルーフバルコニーのように直下が居室の場合などは当然リスクも大きくなります。
また複数のユニットでバルコニーが構成されている場合もあります。こちらの写真は我が家のメインバルコニーですが、2つのユニットが使われており、つなぎ目があります。つなぎ目の加工は接着剤、ドライヤーで乾燥後にFRP塗装を行うなど防水加工の手順がとられますが、それでも一番危険な部分になります。
バルコニーの床材の選択
バルコニーの床材は磁器質タイル又はWPC(木材とプラスチックの混合材)パネルの選択が可能です。
WPCパネルは取り外すことが可能です。一見掃除しやすく感じるかもしれませんが、隙間からは雨水やゴミが下のバルコニーユニットに溜まるデメリットがあります。雨水にさらされるとFRP防水されたバルコニーユニットであっても劣化が早く進む可能性は捨てきれません。
バルコニーは雨漏りのリスクも常に抱えていることもよく知っておくことが必要かなと思います。
バルコニーは最大1マスまで建物から延伸させることも可能です。出っ張りができるので、見た目は悪いかもしれませんがリスクの軽減が可能かもしれません。
また先ほどの軒延伸により雨水からバルコニーを保護することも有効なのではないでしょうか。
最後に
雨漏りのリスクと考えると設置に及び腰になりそうですが、メリットもあります。
広いルーフバルコニーでBBQをしたり、星空を観測したりお子さんのいるお宅では洗濯物を干す以外にも様々な用途に利用ができそうです。
間接的ですが、二階の部屋を広く見せる効果もあります。
いずれにしても、バルコニーとは一体どのような構造なのか知ったうえで、利用目的のメリットデメリットも併せて設置を検討してみた方がよさそうです。
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