施工面積を減らすため、あるいはリビングやダイニングの間取りを広く取るために廊下を作らない間取りのプランニングも可能です。
「廊下って本当に必要なの?」という問いに結論を出すことは難しく、廊下のある間取りにも無い間取りにもそれぞれにメリット、デメリットはあります。さらにメリットデメリット自体も、各家庭の事情や考え方によっても変わってきます。
一条工務店を選ばれる方は、その「性能面」に重きを置く傾向が強く、また廊下は全館冷房の導入をを難しくするなどの原因にもなることから、ことさら不必要と位置づけられるケースが多い気がします。
我が家には廊下があります。一階は玄関ホールも含めて3畳、そして二階は2畳。
不必要と思われがちな廊下ですが、廊下を無駄と考えるのか否か、我が家の廊下に対する考え方など間取り検討の足しにしていただければと思います。
知っておこう、一条工務店i-smartの廊下のサイズ
一条工務店の図面は尺モジュールのため、910ミリ×910ミリが1マスの大きさです。
住宅設計の基本単位の設定には「尺モジュール」と「メーターモジュール」があります。「尺モジュール」は基本単位を910ミリ(3尺)とする考え方、一方「メーターモジュール」は1,000ミリ(1メートル)という考え方です。
これに対して廊下の実際の有効寸法はおおよそ78㎝ほど。壁厚により13㎝ほど幅は狭くなります(開き戸の設置場所では、これがさらに狭くなり70㎝ほどです)。
大人二人がそのまま擦れ違うのは難しく、どちらか一人が体を横向きにすれば擦れ違うことができる程度の幅しかありません。
普段利用する廊下としては一般的なサイズですが、バリアフリー化を見越した廊下の設計を検討する場合、車いすの通行を考えると1マスでは幅が不足します。
JIS規格で標準化されている手動車いすの幅は70㎝ですが、国土交通省が定めているバリアフリー化を図るために採用されている設計基準では
- 車いすで通過できる寸法…80㎝
- 車いすで通過しやすい寸法…90㎝
- 車いすで転回(180度方向転換)できる寸法…140㎝
参考(PDF) 基本寸法等(国土交通省)
とされています。
1マスでは足りず、最低でも図面上でも1.5マス(135㎝)幅の廊下を検討する必要があります。
どのような目的で廊下を設置するのかもよく考えておく必要があります。
廊下のある家のメリット・デメリット(1階)
廊下には部屋と部屋をつなぐための役割以外にも設置によるメリットもあります。あくまで我が家におけるメリットとデメリットですが、次のような点になります。
メリット1…意外と使いみちが多かった廊下の壁
一条工務店の平面図(間取り図)では、廊下という表記はありません。赤部分、玄関ホールと合わせて3畳が廊下としての役割を果たしています。
一階廊下には
- 二階へと上がる階段
- 階段下物入れの折れ戸
- リビングの開き戸
- 脱衣所の引き戸
- 洗面所への入り口
- キッチンの開き戸
があります。さらに設備関係では
- 床暖房のヘッダーボックス
- ピクチャーレール(日用品ひっかけ用)
- 防犯警報スイッチの親機
- 照明・エアイーのスイッチ
を設置しています。
廊下自体が果たす役割は限定されますが、壁があることによりこれだけのものを設置することが可能となっています。
メリット2…水廻りと居室の独立性の確保
我が家は風呂と脱衣所、洗面所の水廻りを共有で使用する二世帯住宅です。
この水廻りに対して2方向からのアクセスを可能にするために、この廊下部分は間取りを作る上でどうしても必要でした。
廊下によってプライベートな空間である水廻りをLDKから独立させることが出来るのは、我が家では大きなメリットでした。
各スペースへのアクセスを2方向にすると、使いやすい間取りになります
メリット3…音の緩衝地帯としての役割
廊下が無い場合、LDKと水回りの距離が近く、場合によっては扉1枚で接することになるため、音が筒抜けになってしまうこともあります。
ドライヤーの音、洗濯機の音などの水廻りから発生する生活音は廊下を設けることで減らすことが可能です。
我が家では遮音性をより高めるため、スリッドスライダーも重要な役割を果たしています。
メリット4…妻の動線確保
これは二世帯住宅ゆえのメリットです。完全分離型ならばともかく、我が家は完全共有型(同居型)の二世帯住宅です。
親世帯の来客があった場合、キッチンにいる妻が来客者に会わずに二階へと行き来できる動線を確保しています。この廊下が無い場合、リビングの来客の前を横切っていかないと、キッチンから出られません。
良いことばかりではなく、デメリットもあります。
デメリット1…東西の廊下は北側の部屋が暗くなる
我が家のように東西に走る廊下を設置した場合、北側(我が家の場合水廻り)で外に面していない窓のない部屋(洗面所、脱衣所)は、昼間でもかなり暗くなります。
デメリット2…全館冷房の風の通り道を阻害する
全館冷房をお考えの場合、エアコンと廊下の位置次第では、各部屋の冷房の効き具合が悪くなる可能性があります。
我が家の場合廊下に面して北側の奥に当たるトイレと浴室は、他の部屋に比べて温度が高い傾向が見られます。
全館冷房を考える場合には、廊下を設けることは明らかにデメリットとなります。
冬は全館床暖房のお陰で、一条工務店i-smartで家を建てる場合廊下が寒くなることはありませんので、この点は気にする必要はありません。
それでも廊下は一番寒くなる玄関と繋がっているケースが多いため、間取り次第ではコールドドラフト(不快な冷間を与える気流のこと)を起こす可能性もあります。
床暖房の起点となるHB(ヘッダーボックス)の前の床は、家の中でも一番温度の高い循環液が通る場所です。我が家はこのHBを廊下に設置しています。
また1階各エリアへ伸びる床暖房のホースが集中していますので、家の中で一番床が暖かくなる場所です。
玄関につながる廊下に、このヘッダーボックスを設置することで、廊下と他の部屋との温度差を軽減できるメリットもあります。
2階廊下の役割は限定的
設置理由はズバリ吹き抜け
子世帯のプライベートスペースとなることから、2階は廊下の必要性はあまり感じていませんでした。
それでもわずか2畳ですが廊下を設けた理由が3つあります。
- 階段とセカンドリビング(ファミリールーム)を結ぶための動線の役割
- ロスガードの設置場所
- せっかく作った吹き抜けを見下ろすポイントが作りたかった
間取りを作成する過程では、「吹き抜けを見下ろす廊下を作る」のが一番の目的。
最初に訪れたi-cubeの展示場の吹抜けの二階からの見た解放感の印象が強烈だったためかもしれません。
我が家はオープンステアではなくボックス階段のため、間取りの作成には少々苦労しましたが、この眺めは満足の行く仕上がりになりました。
ロスガードではなくRAの位置にも注意
最近ではあまり話題にもならなくなりましたが、私が打ち合わせを行っていた頃ロスガード90(セントラル熱交換換気システム)のモーター音を軽減させるため、その設置場所はブログでも随分と話題になっていました。
ロスガードの音を軽減させるため、この位置に設置出来たことで納得いく間取りになったつもりでいました。しかし音の問題はロスガードだけではありませんでした。
それがロスガードの排気口(RA:Return Air)からの音でした。
図面をご覧いただくと分かりますが、この2階廊下にはRAが2カ所あります。なぜこんな狭い廊下に1Fと2Fの排気口が近接して設置されたのか理由を聞かなかったので分かりません。
こちらの記事にも書きましたが、ロスガードの音よりも、このRAの排気音の方がうるさい感じがします。
その音量は63dB。これをうるさく感じ方は人それぞれのようですが、音に敏感な方は、是非RAの位置もよく確認しておいてくださいね。
余談ですが個人的には、ロスガードは正面よりも側面のほうが音が大きい気がします。横方向に部屋がある場合中止してください。
2階廊下に設置すればよかったと思う物
それはRAYエアコン。
4年前、打ち合わせをしていた当時、全館冷房に対する情報もまだ見かけたことがなく、「高気密高断熱住宅はエアコンの効きが良い」という程度の認識しかありませんでした。
結果、ダイニングのRAYエアコンのほかに、二階セカンドリビングに1台、寝室に2台、子供部屋にも1台のエアコンを我が家では設置しています。
当時全館冷房の考え方や方法などが分かっていれば、間違いなく吹き抜けに面したこの2階廊下にRAYエアコンを設置していたかなと思います。
一台のエアコンで全館冷房を行う方法はまぼこさんの記事が大変参考になります。
参考 エアコン1台の全館冷房を計画してなかった家で快適に暮らす方法
仮にこの位置へのRAYエアコンの設置が、一台のエアコンによる全館冷房につながるかの判断は難しいところです。しかし現状より2階の快適さは増したのではないかと考えています。
最後に
我が家では廊下を設けて良かったと感じています。
廊下もそうですが、まずそこで暮らす家族に合った生活動線を考えてみることが暮らしやすい間取りを決める近道になると思います。
また間取りの作成に当たっては、現在ではなく将来の暮らし方を想像してみることも必要です。子供が大きくなった時、家族構成に変化が訪れた時なども考えておくことが、将来に渡って暮らしやすい住まいとなることでしょう。
廊下の設置については賛否両論ありますが、一般的なメリットだったりデメリットだったりは、必ずしも皆さんそれぞれのご家庭によっても異なってきます。廊下にも全く同じことが言えます。
生活スタイルをご家族でよく話し合った上で、さらには長期的な視野も検討に入れながら後悔しないように廊下の設置は検討したいものです。
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