2017年の太陽光発電の結果は如何でしたでしょうか?
全国的に見ると、発電量にもっとも影響する全天日射量は2016年と比較すると、全国的に増加した結果となっています。
今回は2017年の年間発電量が確定したことで、2016年との比較では、どのくらい発電効率が低下したのかについて検証しておきたいと思います。
太陽光発電設備に関するデータ
はじめに我が家の太陽光発電の設備に関するデータをご紹介しておきます。
- 太陽電池モジュール(単結晶)…20.09kW(屋根15.17kW、ソーラーカーポート 4.92kW)
- 屋根勾配…1.5寸(屋根搭載・カーポート共)
- パネルの方位角…真南より2.45度東向き
- パネル設置場所…群馬県前橋市
- 買取価格…全量買取32円(税込34.56円)
- 夢発電システム利用…金利1%、支払回数120回(10年)、元利均等返済、毎月の元利金合計57,821円
特に断りが無い場合、発電量は我が家のパネル搭載量20.09kWによるデータです
パネルの仕様については、日本産業のHPをご覧ください。
2017年の発電量
発電量
2017年の年間発電量…25,723kWh(太陽光パネル1kWあたり1,280kWh)
(参考)2016年…24,798kWh(太陽光パネル1kWあたり1,234kWh)
昨年と比較すると103.7%となりました。
対シミュレーション(初年度の発電量予想)比では123%(年1%のパネル劣化は未考慮)となりました。
月別で見ておくと
2016年 | 2017年 | 差 | |
1月 | 1,630 | 1,895 | 265 |
2月 | 2,144 | 2,240 | 95 |
3月 | 2,479 | 2,407 | -72 |
4月 | 2,488 | 2,743 | 255 |
5月 | 2,693 | 2,583 | -111 |
6月 | 2,209 | 2,670 | 461 |
7月 | 2,282 | 2,380 | 98 |
8月 | 2,285 | 1,850 | -435 |
9月 | 1,581 | 2,171 | 591 |
10月 | 1,786 | 1,399 | -388 |
11月 | 1,472 | 1,639 | 167 |
12月 | 1,749 | 1,748 | 0 |
(単位:kWh)
11月の発電報告にも書きましたが、前年同月対比でかなりアップダウンの激しい一年となりました。
全天日射量
一方で、発電量を左右する全天日射量はどうだったのでしょうか。
全国の全天日射量を観測している中から12ヶ所のデータをピックアップして、2016年、2017年と平年値(1981年~2010年までの30年間の平均)で比較してみました。
2016年 | 2017年 | 平年値 | 対前年比 | 対平年比 | |
札幌 | 4,570.3 | 4,598.7 | 4,433.9 | 100.6% | 103.7% |
青森 | 4,489.2 | 4,541.5 | 4,331.9 | 101.2% | 104.8% |
仙台 | 4,744.3 | 4,704.6 | 4,461.0 | 99.2% | 105.5% |
東京 | 4,629.7 | 4,943.9 | 4,389.0 | 106.8% | 112.6% |
前橋 | 5,011.1 | 5,227.9 | 4,740.9 | 104.3% | 110.3% |
名古屋 | 5,288.7 | 5,373.8 | 4,921.6 | 101.6% | 109.2% |
新潟 | 4,587.2 | 4,490.0 | 4,403.1 | 97.9% | 102.0% |
大阪 | 5,217.5 | 5,332.3 | 4,712.0 | 102.2% | 113.2% |
広島 | 4,984.0 | 5,266.1 | 4,979.5 | 105.7% | 105.8% |
高知 | 5,146.3 | 5,421.4 | 5,166.4 | 105.3% | 104.9% |
福岡 | 4,861.4 | 5,237.3 | 4,829.9 | 107.7% | 108.4% |
鹿児島 | 4,982.2 | 5,149.3 | 5,098.4 | 103.4% | 101.0% |
(出典:過去の気象データ・ダウンロード(気象庁HP)より作成、全天日射量の単位はMJ/㎡)
2016年と比較すると、多くの地点で2017年の全天日射量は多かったようです。
さらに平年値との比較では、すべての地点で2017年は全天日射量が100%を超える結果となりました。
全国的に見て2017年は前年に比べて発電量が増えた地域が多かったと考えられます。お住まいの地域はいかがだったでしょうか?
気になるパネルの性能劣化
発電開始から2年3カ月が経過しましたが、パネルの性能劣化がどのくらい進んでいるかは気になるところです。
昨年9月に検証したパネルの性能劣化ですが、ちょうど一年が終了したところで2016、2017年の比較で検証してみます。
発電量を左右するのは、太陽からの放射エネルギー量になります。この放射エネルギー量を水平面で測定した値が全天日射量と呼ばれる数値です。
これに対して傾斜面日射量はパネルが設置されている屋根勾配と方位角が受ける放射エネルギー量を測定したものです。
このブログでは傾斜面日射量は全天日射量をもとに計算により算出した数値を用いています。
(参考)傾斜面日射量を計算で求めるには、まず全天日射量を水平面直達日射量と水平面散乱日射量とに分解します。次に水平面直達日射量と太陽高度、太陽電池面入射角から傾斜面直達日射量を、水平面日射量と太陽電池の傾斜角とアルベドから傾斜面反射日射量を求め、さらに水平面散乱日射量と太陽電池の傾斜角から傾斜面拡散日射量を計算し、最後に傾斜面直達日射量、傾斜面反射日射量、傾斜面拡散日射量を合計し傾斜面日射量を算出しています。
傾斜面日射量からみる発電効率の低下
まず発電量と発電に最も影響がある全天日射量、傾斜面日射量の変化はどうだったのか?比較したのが次の表です。
対前年比 | |
発電量 | 103.7% |
全天日射量 | 104.8% |
傾斜面日射量 | 105.7% |
傾斜面日射量は前年に比べて105.7%となっていました。一方で発電量は前年比で103.7%と傾斜面日射量と比べると2%少なく、思ったより発電量が伸びていない印象を受けました。
損失係数
傾斜面日射量を使うと、発電量の推定が可能です。
推定発電量=(傾斜面日射量)×(パネル搭載容量)×(温度・風向・風力・影の影響による補正係数)×(パネル受光面の汚れによる損失)×(パワーコンディショナの変換効率 )×(その他損失)
つまり損失0での発電量は上記の式の損失に係る部分を控除すれば、求めることが出来ます。
損失0における推定発電量=(傾斜面日射量)×(パネル搭載容量)
この式を利用して、これと実際の発電量とを比較すれば、損失率の合計がどの位になっているか推定することが出来ます。
私の場合は上記画像のように日々の状況を管理しています。これによると2016、2017年の年間の損失率は次の表の通りでした。
損失率 | |
2016年 | 15.0% |
2017年 | 16.6% |
[box01 title=”損失率”]
損失率は一年で1.6%ほど増加していました
[/box01]
月別のデータは次のような状況でした。
損失 | |
2016年1月 | 19.61% |
2016年2月 | 6.14% |
2016年3月 | 10.78% |
2016年4月 | 11.16% |
2016年5月 | 15.48% |
2016年6月 | 18.49% |
2016年7月 | 19.84% |
2016年8月 | 19.11% |
2016年9月 | 19.41% |
2016年10月 | 16.56% |
2016年11月 | 14.68% |
2016年12月 | 6.94% |
2017年1月 | 7.96% |
2017年2月 | 9.75% |
2017年3月 | 10.51% |
2017年4月 | 17.34% |
2017年5月 | 20.15% |
2017年6月 | 21.70% |
2017年7月 | 22.35% |
2017年8月 | 20.93% |
2017年9月 | 19.01% |
2017年10月 | 16.03% |
2017年11月 | 12.96% |
2017年12月 | 12.87% |
ちょっと分かりずらいのでグラフにしてみました。
2016年に比べて2017年の方が、明らかに損失率が大きくなっています。特に今年の5~8月では、昨年まで一度も記録したことがなかった20%台の損失率が4回も発生しています。
損失率が大きくなった原因が、パネルの性能劣化なのか、気象条件なのか、はたまた表面の汚れによるものなのかなど詳しい原因は分かりません。しかし明らかに発電効率が悪化しているのが分かります。
傾斜面日射量と発電量の比較
別の方法でも確認しておきます。傾斜面日射量1kwh/㎡あたりの発電量の比較ではどうなったでしょうか。
2016年 | 2017年 | |
傾斜面日射量…① | 1,451.8kwh/㎡ | 1,534.7kwh/㎡ |
発電量…② | 24,798.23kwh | 25,723.80kwh |
②÷① | 17.08kwh | 16.76kwh |
となりました。傾斜面日射量kwh/㎡あたりの発電量は17.08kwhから16.76kwhに減少していることから発電効率の低下は
[box01 title=”単位当たりの傾斜面日射量の比較”]
発電効率の低下は1.9%
[/box01]
先ほどの損失率を用いた結果と比べると、0.3%と僅かですが、発電効率の低下が大きくなりました。
いずれにしても発電効率はこの一年だけをみても1.6%~1.9%程度低下しているようです。
発電開始から丸二年経過した際の昨年の記事ではパネルの性能劣化は1.06%となっていましたが、2年3カ月経過の現時点で調べてみるとこれよりも大きい数値となっています。
最後に
この1.6~1.9%の発電効率の低下について、はっきりと何が原因なのか特定するのは不可能かなと思います。
ただ先ほど見た通り、温度の影響、パネルの汚れ、パワーコンディショナの性能低下など複合要因によるものであることは間違いありません。
一条工務店(日本産業)はネットを通じて各家庭の膨大な発電データを収集しています。その数約52,000軒、搭載容量は551メガワットにも上ります。この豊富なデータを生かして、我々利用者に還元できることがあるかもしれません。
例えばパネル清掃のおすすめ時期のお知らせやパワコンの交換の時期などのアドバイスなど、一条工務店にとっても売上増加につながるわけで、今後実現してくれるとありがたいです。
いずれにしても年間で1.9%ずつ発電量が低下していくと、20年後の発電量は当初の発電量の68%まで落ち込む計算となります。1%ずつ低下するのに比べて約15%ほど発電量が少なくなります。
継続的に発電効率の低下は検証することが大事ですが、それに対する何らかの対策も将来必要になるかもしれませんね。
コメント
閑古鳥さんのブログ興味深く読ませていただきました。
一条工務店が集めている太陽光発電のデータはビックデータ化しているのでデータを貰えたら情報処理系の卒論テーマにできそうですね。
さて一条工務店のパネルはアモルファスシリコンなので、劣化の原因は、ステブラー・ロンスキー効果で説明した方が良いのではと思います。数年から10年で発電効率が10%劣化した後は、発電効率の劣化はあまりないとされています。wikipediaにも説明がのっているようですね。
参考になればと
猫の執事さんこんにちは^^
記事をご覧くださり、コメントまでいただきありがとうございました。
お恥ずかしながらステブラー・ロンスキー効果について全く知りませんでした。
が、現在のパネルはアモルファスではなく単結晶となっているようで、発電効率の低減の仕方は異なるかもしれません。