注文住宅をお考えの方はおそらく一度はご覧になったことがあるSUUMOに、事もあろうか?一条工務店が掲載されているのを初めて見ました。
参考 一条工務店(SUUMO)
私が注文住宅を意識し始めた2013年の冬には、このSUUMOに一条工務店は掲載されていませんでした。いつから掲載が始まったのか私はよく知りません。
SUUMO以外にも住宅比較サイト、資料請求サイトにもこれまで見かけなかった一条工務店の広告が掲載されていました。
参考 一条工務店 新宿展示場の施工事例一覧(LIFULL HOME’S)
一条工務店はこれまでネットを使った広告も行っています。
↑こんな感じで検索サイトで表示されるこのような広告を皆さんはご覧になったことがあるのではないでしょうか?
今回の広告は住宅専門サイトへの出稿という点で非常に興味深いのですが、今頃何故急に?という感が否めないのも事実ですよね。
一条工務店の基本戦略は展示場
2018年現在業界トップの住宅展示場棟数を誇る一条工務店、HPには
広告や宣伝より、実際に展示場をご覧いただくことが、一条工務店のことをよく知っていただくための最良の手段だと考えています。その結果、住宅展示場数第1位を達成。今後もその数を伸ばしていく予定です。この数字は私たちの実績であり、ポリシーの表れです。(一条工務店HP:企業情報より引用)
と書かれています。住宅展示場に行ってみて初めて一条工務店の名前を知ったという話もよく耳にします。
あたかも貧者が珠を持ったかのように名を惜しんでいたわけではないのでしょうが、極端に広告の露出を控えてきた同社、実際に展示場でその性能を知ってもらうことに力を入れてきたのはご存知の通りです。
国土交通省が発表した「平成26年度住宅市場動向調査」によれば施工者に関する情報収集で注文住宅取得世帯のトップになったのは住宅展示場の49.2%でした。
人生で一番大きな買い物と言われる住宅購入ですからネットで気軽に選べる類のものではなく、現物を見て、実際に話を聞き、そして比較して決定していく過程がどうしても必要になります。
そういう意味において住宅展示場での仕掛けに拘ってきた一条工務店の展示場中心の営業方針は理にかなったものだったことがこの調査からは明らかになっています。
飛躍的に販売数を伸ばした現在の一条工務店
ここ3年毎年120%の増収を続けた一条工務店は今や現在積水ハウスに次ぐ業界第2位の販売戸数となりました。
(出典:一条工務店・企業情報より引用)
これに伴い一条工務店は売上高でも著しい伸びを示しています。ちょうど一年前のさすけさんが記事にされた際のデータを見ると良く分かります。
参考 消費税増税をものともせず売れているハウスメーカーはどこ?いま売れているハウスメーカー・売れなくなったハウスメーカー
ところが直近の2015年3月期の売上高は2,834億円 (グループ合計では3,366億円、経常利益288億円)となり、2014年3月期までと比較すると前年対比の売上高の増加ややは鈍化(102%)しているようにも見受けられます。
鈍化しているといっても、上棟待ちの期間が延びていることなどを考えれば、もしかすると現在の営業、設計、工事業者の数で対応できる施工数の上限まで近づいているのではないかとも考えられます。
(2017年10月追記)2016年3月期の売上高は3,032億円(前年比106%) 、経常利益224億円
(2018年8月追記)2017年3月期の売上高は3,946億円(前年比119%)、経常利益282億円
最新の一条工務店の業績を知る方法についてはこちらの記事を参考にお調べください。
住宅市場の動向
販売戸数を順調に伸ばしてきた一条工務店ですが、それを取り巻く住宅市場は現在どうなっているのでしょうか?
バブル崩壊前には年間167万戸あった新設住宅着工戸数は平成26年には88万戸まで減少しています。88万戸のうち持家は27万戸、注文住宅はこの27万を各HM、工務店などが奪い合っているのが現状になります。
一条工務店の販売戸数は先ほど見た通り年間1.2万戸。一部分譲やマンションも手掛けますが、大半は注文住宅だと思われますので、持家の新規着工のうち4.5%程度のシェアを持っているのではないかと思われます。
しかしこの新規着工戸数は本格的な人口減少局面を迎える日本において、住宅産業の未来は決して明るいものではなく、逆に斜陽産業といってもいいかもしれません。
現在年間88万戸の新規着工件数は2025年には62万戸まで縮小していくというレポートを野村総合研究所が一昨年発表しています。これから約10年で現在の70%まで市場規模が縮小するわけです。現在の企業規模を維持していくには当然他社のシェアを奪っていくしか方法はありません。
これまでのように住宅展示場でお客さんを待っているだけの営業方法ではなく、ネットの住宅広告を通じて企業の知名度を上げていく必要性に迫られているのではないかと勘ぐってしまします。おそらく今回の広告に関してもその手始めなのではないでしょうか。
さらに最近内覧会が行われている「i-palette」ですが、こちらは先ほどの88万戸のうち23万戸を占める分譲住宅の分野への本格的な進出を目的とした商品であることは明らかです。
持家と分譲を合わせれば現在も50万戸の市場規模がありますので、仮に10年後7割に減少したとしても35万戸、現在の持家の着工戸数より多くはなります。
ただし分譲住宅を扱う場合には当然土地を仕入れなければならず、建てた住宅が売れなければ土地を含めて不良資産化するリスクもあります、良い事ばかりでは決してありません。
さらにこのような環境のもと、新規のマーケットのみに目を向けていてはいずれジリ貧は免れないことから、早晩リフォーム市場にも食指を伸ばしてくるのは想像に難くないと思われます。
最後に
たかがネットの広告に掲載を始めたことぐらいでと思われるかもしれませんが、私がこれまで感じてきた一条工務店とは明らかに異なる、何か異質なものを今回感じました。
一条工務店が発行した「I am ICHJO」という本の中では
TV-CM、やりません。
今までも、これからも(たぶん)
という件があります。テレビコマーシャルを今すぐやるかと言われれば、やはりやらないのかもしれません。
しかし市場が縮小する中で知名度不足によるビジネスチャンスの損失は今後の経営に悪影響を及ぼすとしたら…今回の取り組みはその解消のための最初の一歩なのかもしれません。
順調に成長してきた一条工務店ですが、今後の歩みは決して楽ではないことだけは容易に想像できますね。
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