5月からの電気料金値上げに大きく関係する燃料費調整制度の仕組み

電気代
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報道によると5月から電気料金が大幅に上昇するそうです。

上昇する原因として

  1. 再生エネ発電賦課金が5月から増額
  2. 火力発電の燃料となる原油、LNGの価格上昇

とありますが、いつ見てもこの手の報道、分かりずらいですよね。

「標準家庭で月150~210円程度の値上げとなる見通し」と記事にありますが、「そもそも標準家庭って何?」とか「標準家庭ではなくうちの場合が知りたいんですけど」って思いませんか。

標準と言っても何人家族のことか、同じ人数でも家族構成・ライフスタイルによって、電気の使い方は全く異なります。

「5月になって検針票が届いて見なければ分からない」とならないようにするために、電気料金の再生エネルギー発電賦課金と燃料費調整制度の概要について知っておくのもいいかもしれません。(再生エネルギー発電賦課金は全国一律の単価となっていますが、燃料費調整単価はお住まいの地域で異なっていますのでご注意ください)

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標準家庭って?

まずは「標準家庭って何?」から見ておきます。

燃料費調整単価の上昇によって、電気料金がどのくらい変わってくるのか計算されています。この計算で使われている平均モデルは使用電力量260kWhの家庭となっています。

4月分からの再生エネルギー発電賦課金と燃料費調整額の単価上昇はそれぞれ0.39円、0.41円なので、合計すると204円の電気代上昇となり、冒頭の電気代の上昇額とほぼ一致しました。

それにしても260kWhの使用量は少なすぎると思いませんか?

我が家の昨年4月分の使用料は696kWhだったので、平均モデルとは程遠く、昨年と同じ電気使用量だと今年は500円値上がりすることになります。

報道内容だけ見ていたのでは検針票が届いてビックリという事にもなりかねません。

再生可能エネルギー発電促進賦課金と燃料費調整額

今回の値上げの要因となっている、再生可能エネルギー発電促進賦課金と燃料費調整額ともに、電気使用量に単価を乗じた金額が請求されます。

再生可能エネルギー発電促進賦課金と燃料費調整額の3年分の単価の推移をグラフにしてみると

再生可能エネルギー発電促進賦課金の単価は段階的に引き上げられて、この3年間で1.89円上昇しています。ただし単価改定は年一回なので、価格に与える影響も予測ができます。

一方燃料費調整額は毎月単価が見直され、3年間の最高値と最安値では7.78円もの開きがありました。

この変動幅から電気料金の請求額への影響が大きいこと、単価が上下することから電気代に対する影響も直前になってみないと分からない点で厄介なものとなっています。

この燃料費調整制度について詳しく見ていきます。

燃料費調整額について

燃料費調整額って何?

電力をつくるために必要になる燃料(原油・LNG・石炭)の価格変動を電気料金に反映させる仕組みが燃料費調整制度です。

調整制度については東京電力のHPに詳しく書かれています。

電気料金単価が決められた後に、火力発電に使う燃料代価格が動く影響を、電力料金単価ではなくこの燃料費調整単価で調整しているわけですね。

また原発事故後は火力発電のウェイトが高くなっていますから、この単価も大分上昇しています。

平均燃料価格の計算に使われる燃料の価格推移

原油価格についてはニュースで取り上げられることも多く、またガソリン価格は普段から目にしますので、原油が現在高いのか安いのか、おおよその見当は付きます。

しかし燃料費調整で使用される大半はLNGと石炭なんですね。相場観が全く分かりません。

そこで過去3年間のそれぞれの価格推移を見てみました。

まず原油価格から。

次にLNG

最後に石炭

(出典:世界経済のネタ帳

石炭は主な生産国の中国の生産調整、中国、豪州の事故による生産障害が原因となり、価格が大幅に上昇したようです。

いずれの燃料価格も2016年に底を打った後、価格は上昇を続けているのが分かりました。

計算過程を見ると分かる価格に反映されるタイミングのズレ

参考までに燃料費調整額がどのように求められているのか計算過程を書いておきます。ここは興味のない方は読み飛ばしてください。

この例で求めるのは4月分(我が家では3/8~4/6)に適用される燃料費調整単価です。

使われる燃料価格は平成28年11月~平成29年1月平均の貿易統計価格になります。

平均原油価格34,876円/kl
平均LNG価格42,648円/t
平均石炭価格10,092円/t

平均燃料価格の計算

関東エリアでは次の式で求められています。

(平均原油価格)×0.197+(平均LNG価格)×0.4435+(平均石炭価格)×0.2512

この式に先ほどの貿易統計価格を入れて計算すると、平均燃料価格は

34,876×0.197+42,648×0.4435+10,092×0.2512=28,300円(百円未満切捨)

となります。

②燃料費調整単価の計算

使用するのは

平均燃料価格…①で計算した値

基準燃料価格…料金設定の前提となる平均燃料価格のこと、平成24年1~3月平均の貿易統計価格をもとに算出されており、価格は44,200円

基準単価…平均燃料価格が1,000円/kl変動した場合の燃料費調整単価のことで、関東エリアでは22.8円

これらから燃料費調整単価を計算します。

この基準燃料価格平均燃料価格より低い場合の燃料費調整単価(銭/kWh)は

((平均燃料価格)-(基準燃料価格))×(基準単価)÷1,000

で求められますので

(28,300-44,200)×22.8円÷1,000=▲362.52銭=▲3.63円

となります。

検針票に書かれている数値と一致しています。

覚えておきたいのは4月分の燃料費調整単価は11月~1月の燃料代をベースとして計算が行われている点です。

いくら燃料価格が下がっていても電気代に反映されるのには2~4か月後になってしまいます。さらに原油価格が平均燃料価格に占める割合は24%程度で、残りの76%は石炭とLNGの価格が占めていることも、この単価を分かりにくくしている要因と言えます。

直近の燃料価格がこちらです。

ドバイ原油価格(円/ℓ)石炭価格(円/kg)LNG(円/100万BTU)
2016年11月29.63円11.53円770.59円
2016年12月37.73円10.72円821.73円
2017年1月38.57円10.29円860.63円
2017年2月38.53円9.76円848.04円

5月分では12月~2月の燃料価格が使われますので、燃料費調整単価はさらに上昇しそうですね。

まとめ

詳細まで理解しておく必要はないですが、燃料費調整制度で押さえておきたいのは次の三点だと思います。

① 「燃料費調整額」は火力発電に使われる原油LNG(液化天然ガス)石炭3ヶ月ごとの平均燃料価格に基づいて算定されている。

② 火力燃料のうちLNGと石炭が7割以上を占めている。

③ X月、(X+1)月、(X+2)月の貿易統計価格をもとに算定された平均燃料価格が(X+5)月の電気料金に反映される。

再生可能エネルギー発電促進賦課金と燃料費調整単価の値上げは大きく家計に響きます。

しかし電気料金単価を比較するとその変動幅は微々たるもので、やはり省エネを心がけ電気使用量を減らすことが電気代の節約には欠かせませんね。

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