東京電力のオール電化住宅向けの電気プラン「電化上手」は2016年3月をもって新規受付を終了しています。
それに代わるのが「スマートライフプラン」ですが、オール電化で最も重要となる夜間の電気料金単価およびその時間帯の短縮、さらにはオール電化機器割引までなくなってしまったことから電化上手と比べてかなり割高な料金プランとなってしまいました。
(追記)「スマートライフプラン」も新規受付を終了しています。東京電力のオール電化向け電気料金プランは、現在「スマートライフS」「スマートライフL」となっています。
電化上手の申込に間に合わなかった方にとって、毎年数万円の電気料金の負担増はこれから先かなりの痛手となります。また現在「電化上手」で契約されている方も2020年3月以降はプラン自体が継続するのか否か現段階では分からないため、将来に向けて検討をしておく必要もありそうです。
電力小売自由化に伴って様々な企業がこの事業に参入してきたものの、「電化上手」を超えるオール電化向け電気プランは存在するのか、調べてみました。
電力小売全面自由化から半年経った現在の状況
新電力への切り替えを行った件数
2016年4月に始まった電力小売の全面自由化から半年が過ぎました。一体どのくらいの消費者が新電力への契約先の切替え(スイッチング)を行ったか想像できますか?
10月に資源エネルギー庁がまとめた進捗状況によれば、9月末時点での申込件数は約188万件となっていて、低圧契約口数の約3%となっているようです。
管内 | 申込件数(万件) | 率(%) |
北海道 | 9.5 | 3.4 |
東北 | 5.7 | 1.0 |
東京 | 108.3 | 4.7 |
中部 | 14.6 | 1.9 |
北陸 | 0.6 | 0.5 |
関西 | 38.1 | 3.8 |
中国 | 0.8 | 0.2 |
四国 | 1.2 | 0.6 |
九州 | 9.7 | 1.5 |
全国 | 188.4 | 3.0 |
(出典:電力小売全面自由化に関する進捗状況(経済産業省資料)より引用)
地域別にみると東京、関西地区のような市場規模が大きい地域は選択肢も多いためか新電力への切り替え率も高くなっています。北海道については電気料金が二度にわたって値上げされたのが影響しているようです。
6月現在の新規参入業者による低圧料金メニューの数を見てみると、やはりスイッチング率の高い地域ほど業者数も選べるメニュー数も多くなっているのが分かります。
管内 | 選択可能事業者 | 選択可能メニュー |
北海道 | 7 | 24 |
東北 | 5 | 7 |
東京 | 24 | 61 |
中部 | 8 | 24 |
北陸 | 1 | 2 |
関西 | 12 | 23 |
中国 | 1 | 1 |
四国 | 1 | 1 |
九州 | 8 | 25 |
(出典:電力小売全面自由化に関する進捗状況(経済産業省資料)より引用)
新電力会社のターゲットは
先ほどのスイッチングを行った消費者の電力使用量及び電気料金をみていくと
大手電力会社 | 新電力 | |
販売電力量 | 156億kWh | 1.7億kWh |
販売額 | 3,668億円 | 37億円 |
販売単価(kWh) | 23.6円 | 21.9円 |
契約口数 | 7,371万件 | 61万件 |
販売電力量(一口) | 211kWh | 281kWh |
販売額(一口) | 4,976円 | 6,151円 |
(出典:電力小売全面自由化に関する進捗状況(経済産業省資料)より引用)
新電力にスイッチングを行った消費者の月間の電力使用量は281kWhとなっており、電気消費量が多い家庭を新電力会社がターゲットとしていることが分かります。
またより多くの電力を使用している消費者の方がスイッチングに積極的だったのかもしれません。
さらに新電力の方が大手電力会社を利用している消費者に比べて単価が1.7円安い21.9円になっている点は興味深いところです。
オール電化の我が家では、電気小売自由化に際して様々な新電力会社のメニューの中から安い電気料金プランを検討はしてみましたが、全く見つかりませんでした。
というのも2016年3月まで提供されてきた東京電力管内に限って言えば、オール電化向け電気プランの「電化上手」の料金設定があまりにも強力だったと言えるかもしれません。
オール電化向け料金プランでスイッチングは可能か
電化上手利用の場合はスイッチングしない方が得
電化上手では電力使用量が増える夜間の時間帯の電気単価を12.25円に設定しています。北陸電気が7月末で募集を中止した「エルフナイト」の7.77円ほどではありませんが十分低い単価です。
料金体系の優位さに加えて、大きかったのが全電化割引の適用です。これを考慮すると単価はさらに安くなることが分かります。
一番使用量が多くなる夜間の電気単価は実質11.64円です。
現在東京電力が提供しているオール電化プラン「スマートライフプラン」がこちらです。
(出典:東京電力エナジーパートナー「スマートライフプラン」より引用)
日中の単価は引き下げられてはいますが、夜間の時間が3時間短縮されたこと、何より単価が5.82円増加したことが影響し電気料金はその分高くなっています。
他の大手電力会社と比較しても、夜間の電気単価はかなり高くなっています。
電力会社 | プラン名 | 夜間単価 |
北海道電力 | eタイム3プラス | 14.37円 |
東北電力 | よりそう+シーズン&タイム | 11.22円 |
東京電力 | スマートライフプラン | 17.46円 |
中部電力 | スマートライフプラン | 16.00円 |
北陸電力 | くつろぎナイト12 | 10.76円 |
関西電力 | はぴeタイム | 13.10円 |
中国電力 | 電化Styleコース | 14.60円 |
四国電力 | スマートeプラン | 14.22円 |
九州電力 | 電化でナイト・セレクト | 13.02円 |
「電化上手」を利用している場合はスイッチングは当面考える必要はなさそうです。しかし「スマートライフプラン」を利用している場合、スイッチング可能な新会社は果たして存在するのでしょうか。
オール電化住宅でのスイッチング
スイッチング先となる新電力の料金設定方法を調べると次のようになっています。
(出典:電力小売全面自由化に関する進捗状況(経済産業省資料)より引用)
メニュー自体は増加したものの、ほとんどが現在すでに存在する規制料金と同じ、①の二部料金制を取っていることが分かります。
この二部料金制とは「基本料金」プラス「従量部分」で構成されている料金体系です。④の定額料金制などあれば面白そうですが、残念ながら現在はゼロとなっています。
試算してみると
我が家の電気使用量で試算してみました。2015年12月から2016年1月まで、使用電力量は7,997kWhと普通の家庭に比べて多くなっている点にご注意ください。
夏はエアコンを24時間運転、冬は全館床暖房を11月~4月まで24時間使用、エコキュートは460ℓタイプとなっています。
比較にあたっては純粋に電気料金部分での比較をしています。
「電化上手」
電化上手…料金体系は前述
基本料金25,920円+電気料金177,879円-割引11,242円=192,557円
スマートライフプラン
スマートライフプラン…基本料金:スマート契約1kWあたり450円
電気料金:夜間(1時~6時)17.46円、昼間(6時~25時)25.33円
基本料金27,000円+電気料金185,806円=212,806円
電気料金は僅差であったもののオール電化割引がなくなったことが大きく影響して約2万円程年間電気量が増加。
Loopでんきのおうちプラン
基本料金0円で従量料金は一律26円と、珍しい完全従量制の料金体系となっています。先ほどの③のパターンです。
Loopでんき「おうちプラン」…基本料金0円、従量料金26円(ただし東京電力エリア)
基本料金0円+電気料金207,945円=207,945円
時間帯にかかわらず26円固定ですが、やはり夜間の電気代は増加、ただしスマートライフプランより安い結果になりました。
ソフトバンクのプレミアムプラン
ソフトバンクでんき「プレミアムプラン」…基本料金:スマート契約1kWあたり468円
電気料金:最初の400kWhまで9,700円、400kWhを超えた部分は1kWhあたり29.04円
基本料金28,080円+電気料金209,267円=237,347円
毎月の使用電力が400kWh前後の家庭には適したプランと言えますが、我が家のように消費電力が多くなればなるほど電気代は上昇押してしまう結果に。
(注1)スマート契約とは当月及び過去11月の30分単位で最も大きい値(最大需要電力)の値を2倍にし、単価を掛けて基本料金を決める契約方法。我が家の場合最大需要電力が分からないため、この期間の1時間当たりの最大使用電力5kWhで計算しています。
(注2)比較においては各社共通の燃料費調整額、再生可能エネルギー発電促進賦課金は省いて試算しています。
ご覧いただように我が家の電気使用量では「スマートライフプラン」からのスイッチングの候補となるのは「Loopでんき」のプランとなります。ただしその差が僅かなので各ご家庭の電気使用量は当然ですが、使用時間帯も含めたシミュレーションをする必要があります。
電化上手並みのプランを提供している会社もありました
(追記)サニックスでんきのサニックスナイトセーバーは、現在取り扱い中止となっています。
(出典:サニックスでんきHPより引用)
今回様々な新電力を調べていくうちに「電化上手」と同等の料金プランを提供している会社を見つけました。それがサニックスでんきでした。
料金プランを見てみると
サニックスナイトセーバー(関東地区地域プラン、現在東京電力のスマートライフプランに契約している方が対象)
夏季昼間(7/1~9/30の10時~17時)36.78円、他季昼間(夏季以外の10時~17時)30.14円、朝晩(7時~10時、17時~23時)24.71円、夜(23時~7時)11.64円
どこかで見たような時間帯、季節区分ですよね。先ほどの「電化上手」の5%割引を電気料金に反映させたものとそっくりです。夏季の料金は「電化上手」より安くなっていました。
本来ならばスイッチング候補として、一押ししたいところなんですが…。
サニックスでんきとは?
事業を行っているサニックスは東証一部上場会社です。何の問題もなさそうなのですが、IR情報をご覧いただくと分かりますが現在業績はハッキリ言ってよろしくありません。
Business Journalにはこんな形で取り上げられています。
シロアリ防除が本業だったがソーラーパネルの設置工事で伸びたサニックスは、16年3月期まで2期連続の赤字決算で今期も最終赤字、無配が続く見通し。株価はピークの13年7月の10分の1以下になった。同社は6月20日、前期以来3度目の希望退職募集に391人が応募したと発表した。人員リストラと自ら見切りをつけた自己都合退職で、14年度末には3291人だった連結ベースの従業員数が2000人未満と、ほぼ半減してしまった。
(出典:Business Journal「太陽光発電、早くもブーム去り倒産ラッシュ…瀕死状態で「不況業種」入りの兆候」より引用)
さらに前期の有価証券報告書の監査報告の中には強調事項として
継続企業の前提に関する注記に記載されているとおり、会社は前連結会計年度に続き、当連結会計年度においても重要な営業損失、経常損失、親会社株主に帰属する当期純損失及び営業キャッシュ・フローのマイナスを計上し、また会社の有利子負債は手元流動性に比して、高い水準にあること等の状況から、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在しており、現時点では継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められる。
との記載があります。
仮に電力会社に万が一のことがあっても、電力供給がストップすることはありません。その後新しい契約先を消費者が見つければいいだけです。
なおこのサニックスでんき、料金支払いがコンビニエンスストアでの支払いに限られていることは大きなマイナスポイントです。クレジット払いは準備中となっていますのでいずれ可能となるかと思いますが、年間20万円の支払いとなるとポイントのロス分も大きいには事実ですし、何より毎月支払いにいかなければいけないのは面倒ですね。
最後に
今回のシミュレーションは電気使用量の多い我が家を例に行っています。オール電化住宅でももっと使用量が少ない場合には今回取り上げた電力会社以外でもメリットが発生する可能性もあります。
電力比較サイトも沢山ありますが、その結果はかなり大雑把なものです。一条工務店で夢発電を導入のご家庭では、ネットにつながっていれば一時間ごとの電力消費量をCSVファイルで入手することが出来ます。検討の際には少々面倒でもエクセルを使ってシミュレーションすることをお勧めします。
なお今回のスイッチング結果は私の試算に基づいたものとなっています。この試算を用いることにより被った損害・損失に対しては、一切の責任を負いかねますのでご了承ください。
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